鈴鹿サーキットが多言語 Web サイトの自動運用をはじめるまで

Takao Tanaka • October 11, 2024

モータースポーツの聖地として、国内外のモータースポーツファンが集まる鈴鹿サーキットは世界的にも知名度が高く、特にコロナ禍後に海外からの来場客が回復するにつれて、外国語での情報発信は重要な取り組みとなりました。

従来、人手で管理していた英語版、繁体字中国語版サイトは現在 Web サイトの自動多言語化ソリューションである Cistate Translation Proxy により運用されています。本記事では鈴鹿サーキットが多言語サイトの運用で直面した課題、自動化ソリューションの導入に至った経緯、導入後の運用についてホンダモビリティランド株式会社 鈴鹿サーキットのWebサイトご担当者にお話を伺います。


世界的にも知名度のあるサーキットということで以前から海外からのお客様も多いかと思います。特にコロナ禍後、海外からのお客様の増加について実際に肌で感じられている変化はありますでしょうか?

 まず、コロナ禍の前は、海外から多くのお客様にご来場いただいていました。F1などで世界中から来場があるレースイベントに加えて、創業当初から遊園地・ホテル・レストラン等の施設も一緒に運営しておりまして、そちらに対しても主にアジア圏からかなり来場が増えておりました。2020年の頭まで順調に右肩上がりだったのですが、コロナ禍でほぼゼロになってしまいました。そこで外国語サイトも、一旦ストップするというような形になりました。


その後コロナ禍が明けて、徐々に海外からのお客様も増えて、特に2024年に入ってから急激に伸びてきました。それに伴って外国語サイトでの情報発信について、情報の量・質・スピードが求められている、というのが現在のところです。



外国語のページは手動で管理されていたということですが、当時は日本語と同じ内容を手動で管理されていたのでしょうか?

日本語のサイトはページ数も多くボリュームもあるので、日本語ページの中から情報をピックアップして、手動で外国語サイトを作るというような形で、規模に関しては日本語の大体1/5レベルの情報量でした。


その頃から対応言語は英語、繁体字中国語の2言語でしょうか?

はい、2014年に英語を、2016年に繁体字中国語を導入しました。英語はまず基本になると思いますが、繁体字中国語の導入は、台湾と香港とのつながりが理由になります。

台湾・高雄市に、弊社が鈴鹿サーキットのライセンスを提供、運営コンサルティングを行っている「鈴鹿サーキットパーク」というモビリティのテーマパークが2016年にできまして、その施設をフックに日本の鈴鹿サーキットへの来場を訴求したいというのが一つ目の理由です。

もう一つは、香港では口コミで小さなお子様をお連れして一緒に遊ぶ、何日か滞在するのに適した施設があるということが広がり、それで香港からのお客様が増えてきていた、ということが理由です。


手動での英語と繁体字中国語の管理について、どのような難しさや課題がありましたか?

公開までのタイムラグです。ネイティブのチェックが必要でしたので、最短でも日本語から遅れて1週間、通常では半月程度はどうしてもかかってしまいました。それに加えてコストの課題もありました。日本語版と同じ内容のものを作るにしても、やはり翻訳等の手間もかかりますので、日本語より余計にコストがかかってしまい、時間、手間、費用においてかなり負担ではありました。

 

当時も機械翻訳という選択肢はあったかと思いますが、ご検討されましたか?

はい、検討しましたが、2010年代の機械翻訳はまだまだ翻訳が弊社の求めるレベルではないという判断で、手動の翻訳を選んだという経緯があります。特に、レース関連の専門的な用語や言い回しがありまして、それらについては、やはり当時の機械翻訳では厳しかったと思います。




では、お使いいただいている翻訳プロキシにお話を進めていきます。最初に当社からお話をさせていただいた時は、どのような期待感がありましたか?

ちょうどコロナ禍が収束に向かっているタイミングで、弊社としては外国語対応やインバウンドへの訴求を再開しようという状況でした。従来の手動で更新するやり方での再開を考えていましたが、翻訳プロキシのお話を伺い、導入例も見て翻訳の品質も確認したところで、選択肢として検討することにしました。

弊社としても、これからインバウンドに向けた取り組みを進めようというタイミングで、翻訳プロキシの導入には時間やコスト等は多少かかるだろうとは思っていたのですが、それでも将来的にはメリットは大きいだろうと考え、導入に至りました。

 

最初はイベント向けの特設ページを対象として翻訳プロキシをお使いいただきました。当時イベントページでのご利用について、こういう点を確認したかった、評価したかったというポイントはありましたか?

導入事例等を見せていただきましたので、翻訳品質について安心はしていたものの、やはり実際に当社のサイトに適用して、本番運用で問題なく動作するかというところは懸念事項でありました。ですが、運用テストを開始し、期待した通りの動作・翻訳のクオリティが見られましたので、社内での信頼も得ることができ、導入については順調に進んでいったと思います。


その後、鈴鹿サーキット様のサイト全体への導入に舵を切っていただきました。翻訳品質に加えて、導入の決め手になったことは何でしょうか?

 まず翻訳の品質はもちろんですが、用語の登録と文章の校正がしやすいというところが大きなポイントでした。基本は自動翻訳で処理しながら、やはり独特の言い回し等は対応できないところが出てきますので、用語の登録や文章の校正を比較的分かりやすいユーザーインターフェースで提供いただけたというところが、大きな決め手でしたね。

あとはコストの違いも大きいですね。従来に比べて、1/10ぐらいになりましたので、将来さらに言語を増やすことも考えられます。

手間の部分では、私が今まで外国語サイト制作に割いていた労力を他のタスクへ振り分けることができて、大変助かっています。これからインバウンドへの訴求というのは、弊社も力を入れていく方針になっていますので、翻訳プロキシは、今後についても非常に役に立ってくれるだろうということで期待はしております。


翻訳プロキシを導入いただいた後に、海外からのアクセス・問い合わせが増えた、などの変化はありましたか?

初めて日本語と同じレベルでの情報を外国語で出しているということで、アクセスは徐々に増えています。ただ、海外からの流入という点については、まだまだ増やしていけると期待をしています。

 

現在、ある程度の期間翻訳プロキシをお使いいただいていますが、運用の際に便利に感じられた機能等はありますでしょうか?

まず、弊社のスタッフが直接、編集権を持って自分で校正することが非常に直感的でやりやすい、という部分があります。また、弊社ではイベント関連で急遽変更が入るというのが多いのですが、そういった変更の外国語版への反映についても、翻訳プロキシは直接日本語の情報を吸い上げて自動翻訳するというシステムなので、迅速に対応できて非常に助かっているところです。

あとはどうしてもサイトの構造的に特殊な部分もありますし、ページ数も多いので、導入にあたって多少のマイナートラブルは出ておりますけれども、その都度迅速に対応をいただいておりますので、満足しております。

 

翻訳プロキシに今後、期待すること、ご要望などあればお伺いできますでしょうか?

 以前の手動の運用に比べると、本当に劇的に変わりまして、プラスの面しかないような状況ではあります。強いて言えば、日本語ページの作りの問題もあるのですが、特に短い文章で意図しない訳になってしまっているところがあります。ページ数が膨大で、すべてチェックというのが難しいので、サイトの内容から違和感のない単語の翻訳が適用されるようになると助かりますね。

また、校正作業がやりやすいというのはあるのですが、例えば新しく入ってきた社員がすぐに作業に当たってもらえるような、更に直感的なユーザーインターフェースがあると良いかな、と思います。

 

あと、もう1つ、翻訳プロキシだけでなく Web 制作まで枠を広げた話にはなりますが、翻訳のシステムを元のサイト作りの方にも寄せていけないかなというのはあります。弊社は複数のWeb 制作チームと協業しており、統一したルールはありますが、単調になるのを避けるという点でも、一部独特な作り方をするところがあります。翻訳プロキシで問題なく翻訳できるようなページの構造を決めて、それを統一ルールとして持つことで、新規で追加したページもスムーズに翻訳できるようにしたい、という考えはあります。そこについては、今後の制作上のルールについては御社とも話し合って改定をしていければと思っています。


鈴鹿サーキットはモータースポーツの聖地として、国内外の人々が多く集まりますが、どんな魅力が人々を惹きつけているのか教えていただけますか?

 大きく分けて2つあると思っております。1つはレース等のモータースポーツ、そしてもう1つが総合レジャーランドとしての位置づけです。

 

レースに関しては、F1世界選手権や鈴鹿8耐といったトップカテゴリーのレースを多く開催しています。2024年で開業から62年になりますが、レーシングコースは創業当時からレイアウトがほぼ変わっておりません。丘陵地帯を切り開いているため、地形を利用したアップダウンも大きいですし、昔ながらのレイアウトのためお客様もコースの近くで観戦いただけます。世界的にも徐々に貴重になってきているオールドスクールタイプのサーキットということで、世界中のお客様や実際に走行されるドライバーの方々からも評価をいただいています。幸い、モータースポーツの聖地として認識いただいているところもあり、積み重ねてきた実績というのは日本だけでなく、世界に通じる部分があると弊社としても自負しております。

 

もう1つが、創業2年目の1963年に自動車遊園地という名前で始まったアミューズメントパークです。お子さん達が、小さい時から自分で触れる・操ることで興味を持ってもらって、家族で楽しみながら、クルマやバイクといったモータースポーツに親しんでもらおうというコンセプトを長く続けてきました。そのため、快適に滞在いただけるようにレストラン、ホテル、温泉等も備えています。弊社では小さなお子様から家族全員が一緒に楽しめる、というところを大事にしております。

 

今は、いろいろなモノ、コトがあふれていますが、弊社として自信を持っているモータースポーツとアミューズメント施設という2つの要素を大事にしながら、国内外のお客様に今後もお楽しみいただきたいと思っております。


鈴鹿サーキット  https://www.suzukacircuit.jp/

各種問い合わせ先  https://www.suzukacircuit.jp/contact_s/

TEL: 059-378-1111 (代表)

受付時間 9:30 – 18:00



必要なのはURLだけ。最小限の労力で導入が可能なCistate Translation Proxy

Cistate Translation Proxyは公開されているホームページから直接情報を取得し、自動的に多言語サイトを構築、運用する仕組みです。大規模言語モデルと独自の自然言語処理技術を組み合わせて高精度のホームページの自動多言語化を実現します。Cistate Translation Proxyの詳細はこちらのページもご覧ください。


本件に関するお問い合わせ

sales@cistate.com

03-6878-5790


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株式会社システートソリューションズ代表取締役の柳英夫です。 旧年中は、格別のご支援とご愛顧を賜り、心より御礼申し上げます。 訪日外国人客数は 3,500 万人を超え、各業界で海外向けの情報発信やサービスの多言語化ニーズが急速に高まっております。当社はこれまで AI 翻訳の SIer(システムインテグレーター)として、AI 翻訳の最新技術を企業様の業務システム・業務プロセスに組み込むソリューションの企画・設計・開発・導入・運用をお手伝いしてまいりました。その中でも、Web サイトの即時多言語化を実現するソリューションは、多くの企業様から評価いただくことができました。私たちの強みは、単なる機械翻訳の導入支援だけでなく、AI のポテンシャルを最大限に引き出し、お客様の目的や要件に合わせて、高品質の翻訳コンテンツをお届けできることにあります。 昨年からは、この取り組みをさらに推し進めるために「 多層 AI 翻訳基盤 」の開発を進めてまいりました。これは、単純に文章を訳すだけにとどまらず、コンテンツを内容面・構造面の両方向から高度に分析、文脈を理解し、企業固有の言葉遣い・表記ルールに準拠し、これまでにない高度な翻訳品質を実現する技術です。Web サイトの多言語化に加え、今後は Word や PowerPoint ファイルなど、ドキュメントを活用するシーンにおいてもスピーディかつ高品質な多言語化を実現できる基盤の開発にもさらに力を入れてまいります。 2025 年も、株式会社システートソリューションズは皆様のビジネスをサポートするパートナーとして、AI 翻訳の導入・運用やグローバル戦略推進を全力でご支援いたします。本年も変わらぬご愛顧のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。 重ねて、皆様のご健勝とご発展を心よりお祈り申し上げます。 株式会社システートソリューションズ 代表取締役 柳英夫
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